9月の大地震で大きな被害を受けた震源プエブラ州では、今も、Airbnbホストが揺るぎないメキシコ流のおもてなしを続けています。インバウンドのAirbnbゲストの数はこの1年で306%増え、Airbnbの急上昇注目旅行先にランクインを果たしました。躍進目覚ましいプエブラの魅力を今回は現地取材でお届けします。

プエブラは首都メキシコシティから車で2時間南にあり、長年、主要観光ルートからは外れる存在でしたが、華やかな歴史遺産を宿す古都として海外でもようやくその真価が認められつつあります。地域の伝統と食、温かいおもてなしをシェアする若い世代を中心に、好循環が生まれているようです。

(以下の記事はスペイン語から翻訳されました)

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自分も含めて、メキシコ人はよく「バロック」と呼ばれます。建築がウルトラバロックというのもありますが、複雑で細かい割には派手好きで、ちょっとやり過ぎてしまう国民性がバロックそのものなのです。女の子の15歳の誕生日を盛大に祝う「キンセアニェーラ」がそのいい例です。女の子はピンクのイブニングドレスをまとって、ジェルで髪をガッチリ固めたチャンベラン(男の子)を従えて、それはそれは大変なことになります。アブリエータ(おばあちゃん)は手編みレースで家中の家具という家具を飾りますしね。少しでも「間」があると細々とした色、音楽、食べ物で何重にも埋めないと気が済まない国民性なんですね。全国こんな調子なので、バロック気質の震源をひとつに絞るのは無理難題というものですが、あえて絞るとするならそれはやっぱり、プエブラをおいてほかにはないでしょう。

プエブラは1531年、スペイン入植によってバロックの街として生まれ、その過剰な美の世界に陶酔したまま現代まで来てしまったような街です。建物、修道院、学校はもとより場末の飲み屋、果ては市場のにわとり屋台に至るまで美意識のハードルが異様に高く、市内に360以上ある教会はどこもかしこも装飾がみっしり隙間なく施されており、色の統一感、タイポグラフィにもこだわる念の入れようです。そこまでやるのか、と畏敬の念を感じずにはいられません。

この圧巻の美の世界に浸ろうと、旅の上級者の流入が日増しに増えています。カラフルなペンキで塗り立てた観光客向けのプエブロ集落や、海岸の賑やかな夜遊びスポットでは飽き足らず、もっと本物の伝統が息づくカッティングエッジなものを求めると、流れ流れてプエブラのダウンタウンに行き着くようです。

ポブラノス(プエブラ住民の愛称)が何よりも大事にするのは伝統を今に伝えることです。「バロックで上等ですよ」と、夫のLuis Moraさんとダウンタウンの真ん中に住むMalú Arrelanoさんも余裕の笑顔です。ご夫妻はお嬢さんが巣立ち、19世紀に建てられたご自宅をフルリノベーションしたことをきっかけにAirbnbホストになりました。曾祖父の代から受け継いだアンティークも数十年ぶりに蔵出しされ、骨董を配したゲスト用ルームはまるでおしゃれなデザイナーズホテルのよう。街の歴史と代々の温もりが感じられる空間となっています。

新しいものと古いもの。その一番よいところを融合するバロックモダンの新潮流が、多くの人を惹きつけてやまないプエブラのエッセンスと言えます。プエブラでは長年住み慣れたダウンタウンを捨て、郊外の新興住宅地に一家揃って引っ越す民族大移動が50年前から起こっていました。それが子どもや孫の代になってダウンタウンに戻り、古い建物で開業し、通学し、家族のルーツに回帰するUターン現象が起きているのです。

プエブラというと、メキシコ国内では古くから「伝統を頑なに守る閉ざされた社会で、よそ者や新しい発想を採り入れるのが遅い」というイメージが定着していますが、それも変わりつつあるとポブラノスは感じているようです。

Alejandro García Lamaさんは26歳の金融マン。変化を担う若手のひとりです。ダウンタウンにある祖父母の家に引っ越してリフォームし、5ベッドルームをAirbnbで貸し出しています。代々家族で食卓を囲んでいた中庭は、世界中の人たちが食卓を囲む空間に様変わりしました。Lamaおばあちゃんのサボテンとアロエが並ぶ炉端でみんな和気あいあいとビールを酌み交わし、ハンモックに揺られ、ギターを弾きながら歌を楽しんでいます。

いわゆる「ジェントリフィケーション(再開発による高級化)」のように聞こえるかもしれませんが、地上げ屋に強制立ち退きを要求される世界各地の都市再開発と違って、プエブラでは住民を守りたいという思いがその根底にあるという、決定的な違いがあります。

Alejandroさんと同じように、José Adriánさん(36)もこの新しいビジョンに共鳴し、実現に動いた人です。友だちと共同で旧市街中心部バリオ・デ・ロス・サポスの廃屋をリノベし、パン屋「Mostovoi」、レストラン「Casa Nueve」、コワーキングスペース「Workósfera」を開業、2階はAirbnbゲストに貸し出しています。アンティーク蚤の市で有名なロス・サポス広場周辺のこの界隈には今、社会と何かをシェアしたいと考える若者や先進的考えの人たちがたくさん集まっています。

「被差別地域もアートで同化したいと思ったんです」と語るのは、Joséさんと親交のあるアートプロジェクト「Colectivo Tomate」共同ファウンダーのTomás Daríoさんです。「Colectivo Tomate」の本部には、シンコ・デ・マヨ通りの影で長年埋もれてきたアトヤク川の哀史を伝えるアートが壁一面に描かれています。「ダウンタウンはスペイン人エリアで、先住民は仕事でもない限り通ることはできませんでした。こうした歴史も伝えていかないと。歴史を知ればみんなルーツを辿って、先住民の旧市街と大元でつながることができますからね」とTomásさん。

川を隔てた先住民の住区のひとつがXanenetlaです。チームはここに国内外のアーティストを呼んで、壁という壁をアートに変える大がかりなミューラルプロジェクト「Mural City」を展開、インスタグラムで一躍有名になりました。壁に描かれたアートには、各建物に住む人のストーリーが描かれており、住民自らが企画立案に参加するという趣向です。この活動を通して、「危険地帯・Xanenetla」のイメージ払拭にだいぶ貢献しました。

運動を推進した歴史研究家のArturo Ramírezさん(少なくとも7代続くXanenetla住民)は、このような意義を語っています。「ミューラルは観光収入目当ての運動ではありません。ずっと断絶していた人と人をつなぐ架け橋にできれば、という一心で進めました。ここは先祖が煉瓦を1個1個積み上げたプエブラ開市の当時からずっと差別されてきた場所ですから、そこをなんとかしたいと思ったんです」

こう書いてくると良いことずくめですが、金融マンAlejandroさんの母親のAna Lamaさんは、見ず知らずの方を家に泊める息子のことをあんまり快くは思っていなかったといいます。しかし実際にうまく回っている様子を見て納得し、結局はAlejandroさんが巣立った後の自宅のベッドルームもAirbnbに掲載することに同意しました。

プエブラの旧家で生まれ育ったAnaさんは、「まさかこの自分がパキスタンやロシア、フランス、コロンビアの人たちとこんなに気が合うなんて、考えてみたこともなかったです」と自分自身に驚いているご様子。Airbnbで人生が変わってしまったのね、とクスクス笑いながら話してくれました。陽気なAnaさんの朝ごはんタイムはゲストに大好評です。食事の内容(コーンブレッドにチリの細切り+たまねぎのトッピングなど)もさることながら、絆を深め合い、互いを学び合う時間として食事を大切にしている点が評判を呼び、ホスト開業から2年で「プエブラのおかあさん!」と呼ばれるまでになっています。

        プエブラには愛情いっぱいのママがほかにもたくさんいます。冒頭のMalúさんも取材でお邪魔したときには、「ママ、私を養子にしてくれないかな?」とゲストのPaulinaさんに言われていました。冗談半分ですけど、もうすぐお別れという寂しさが言葉の端々に滲んでいます。ゲストが来るたびにMalúさんはいつも、「親戚の家だと思って寛いでいってね。親戚のおじさんおばさんみたいに気遣いは要らないから」と言うのですが、ゲストはなかなか言うことを聞いてくれないようです。19世紀の曾祖母の代からの料理本を見ながら料理の手伝いをしたり、世界中から手みやげを持ってきてくれたり、国に帰ってからも時折連絡をくれる方もいます。一度住んだら去りがたいプエブラなのでした。

* ゲスト寄稿のRogelio Elizalde Aranaさんはメキシコシティ在住の旅ライター兼Airbnbホスト。現在はニュージーランドを取材旅行中です。

**メキシコ、プエブラのインバウンド旅行者数は2016年10月1日から2017年9月30日の間で前年比306%もの成長率を記録しました。