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教師になって10年以上が経ち、マンネリ気味な毎日。そろそろ変えたいと思っても次のステージが見えず、Mattさんは悶々としていました。ただ心にあったのは、海が好きという思い。海に関しては仕事帰りに仲間をサンディエゴで一番のシュノーケリングスポットに案内することもあり、多少は自信がありました。海の中でも先生のクセが出てしまい、つい海の生き物のことを熱く語ってしまうのです。そんなMattさんを見て、とうとうある日、友達の1人が「なんで本業にしないの?」と、何気なく質問しました。それは、バラバラだったパズルのピースがカチッとはまり、新たな人生が回り始めた瞬間でした。

 

きっかけは友人のひとこと

最初はMattさんもホスティングで生計を立てていけるなんて半信半疑でした。ほめてくれるのは友人だからであって、一般の人が興味を持つ内容にも思えません。でも絶対いけると言って譲らない友人が1人いて、その励ましもあって、新しいことに挑戦してみることにしました。持つべきものは友とはまさにこのことです!

いざやってみたら、ホストとしてやることは先生の仕事とそんなに変わらないとすぐ気づき、不安も一段落しました。それにシュノーケリングしながら教える仕事には教室とは違う楽しさがあります。海の生き物がいると、指を差しながらゲストに特徴を紹介できる、まさに「深い知識を共有できるレッスン」。先生としての経験値が、Mattさんが考える一番の差別化要因です。「付け焼刃のツアーガイドとは違うんだぞ、という自負がないと言えば嘘になります。どう説明したら生き物に興味が湧くのか。その辺のことは教壇に立つ身だからわかる進め方ってあると思うんです」

現在掲載中の体験は3種。初心者向けのミッションベイ体験、ラホヤビーチ海洋保護区体験、水泳上級者向けのラホヤコーブ体験です。いずれも世界中からゲストが集まり、ちっちゃなウミウシから巨大なウミガメまで、サンディエゴの美しい海辺に棲む生き物たちとふれあっています。「ここの海には緑ウミガメが4匹ぐらいいます。ちょくちょく見るので、生息域はだいたいわかるのですが、あまり一般には知られていないと思いますね」   

 

大変だったこと

そんな実力派のMattさんもすべてが順風満帆だったわけではありません。一番苦労したのが許可要件で、これは調べるのに相当苦労しました。今だから言えることですが、こんなにさまざまな許可が要るとは、開始前には思ってもみなかったのです。「カヤックやパドルボードを一切使わないシュノーケルでも、海で営業収入を得るには許可が必要なんですよ」。地方自治体の許可要件の情報も探すのは容易ではなく、

ネット検索では全然ダメなことにすぐ気づき、海の見回りのパークレンジャーや行政職員に直接聞いてみることにしました。「パークレンジャーが来るのを待つということをよくして、通りがかったときは、『必要な許可は全部取ったと思うんですけど、ほかにもあれば取り方を教えてもらえますか?』と聞いてみた」のだそう。それだけ読むと大変そうと思いがちですが、いくら人気の体験でも違法では実施することはできませんので、Mattさんはそれだけは避けたいと考え、基盤固めに注力しました。ちなみに許可取得要件の詳細は 、「ホストの責任」ページで確認できます。

体験が一躍人気になると、今度は別の問題が起こりました。Mattさんの体験と瓜二つの体験を作成して公開するホストの出現です。「基本、説明文はすべて転載され、自己紹介も半分が転載されました。そのホストは、それをさも自分が一から書いたかのように掲載していたんです」とMattさん。今でも発見したときのことは忘れられないと言います。それでも怯むことなく苦情を本人に伝えて粘り強く交渉し、ページの内容をオリジナルの文章に差し替えてもらうことができました。これについては対処の詳しい情報をまとめましたので、同じ問題でお悩みのみなさまはぜひお役立てください。

 

海のよさを広める応援団長

体験ホスティングに出会ったおかげで、Mattさんは、自分が一番大事にしたいと思う活動に時間とエネルギーをかける暮らしに転換を図ることができました。「海を守る応援団づくりが目標です。そのミッションに今は没頭できています」。海の生き物を間近で眺めたら、きっと誰だって海を守ってあげたいと思う、という思いで毎日その機会を与える活動に取り組んでいます。「ウミウシを一度も見たことない人に、ウミウシを守ろうと言っても、心に届きませんからね」。海は見渡す限り青一色。でもそのすぐ下には万華鏡のように色とりどりの世界が広がっています。神秘に触れ、大切にしたいという思いを抱えて帰路に着いてもらうのがMattさんの目標です。

もうひとつの楽しみは、海に潜って、ゲストが別人のようになる瞬間に立ち会えること。参加者の中には海が怖い人もいて、体験で変わりたいと考えています。そうした方たちには恐怖を克服できるようケアしているのです。まず大事なことは、潜る前に、互いの交流を図ることです。そのため自己紹介を全員にお願いし、共通の話題を探して声をかけ、ゲスト同士が会話しやすい雰囲気づくりに努めています。「なるべく僕が司会役になって、みんなにマイクを回すイメージで進めています。自分で言うのもなんだけど、結構得意分野かも」。具体的な進め方ですが、たとえば、「どこから来たの?」と誰かに聞いて、ほかの全員に「〇〇に行ったことある人いる?」と聞いてみるだけでも会話の糸口になります。

全員が仲良くなったら、次はいよいよ海に潜る番ですが、このハードルを乗り越える鍵は、忍耐と安心感だというのが、Mattさんが辿り着いた結論です。忍耐が功を奏し、ある女性は最初「恐怖で震えていた」のに背中を押されるように潜りました。するとたちまち怖くないことに気づき、あとは無我夢中になって泳ぎ、ほかのゲストに生き物を指さす余裕も見せたそうですよ?「全身に自信をみなぎらせて後光を放ってるようでした」。怖さを克服するのは口で言うほど簡単なことではありません。そこでMattさんは予約してくれたゲストに、まず勇気をたたえるようにしています。「僕みたいな髭男が近くにいるだけで、それまで潜れなかった人が海に飛び込んで1時間潜ってくれるんだから、むしろこっちが感動なぐらいです」

 

波に乗る

地道な努力が実を結び、Mattさんの体験は最初は想像もしなかったほどの成長を遂げました。「カレンダーの半分以上はAirbnbの旅程でみっしり埋まっている」と言います。この成功を受け、「SnorkelMatt」という会社も最近創業しました。もう教師の片手間の副業ではありません。ひとつのまとまったビジネスとして体験と向き合っています。「本当に自分でも空恐ろしいスピードで大きくなっています。まだ2年も経っていないのに。波がある間は乗っていけっていう天命なのかと思って乗ってます」

これからホストを目指す人たちへのMattさんからのアドバイスは、壁にぶち当たっても「絶対乗り越えられる」と考え、行動することです。最初はMattさんも、「あれもムリ、これもムリと、常に数えている自分がいた」そうです。でもそんな気構えでは、できることもできなくなってしまうとすぐ思い直し、成功のイメージに気持ちを切り替えました。「ムリなこと」を「やることリスト」の単なる用事と考えることにしたのです。「許可証がない」のが問題なら「許可証を取りにいく」だけで片付きます。ことごと左様に「現状に満足せず、常に前に進むことしか考えない」人間だから、きっと成功の女神が微笑んだのではないかとMattさんは分析しています。

Mattさんが思うに、体験はパッションがないと成功しません。Mattさんを突き動かすものは海が好きだという思いですが、海に限らず、好きという気持ちはかならず人の心に響くと感じています。「自分の運命は自分で決めるもの。「パッションがあって、それを伝えたい相手がいる。その場合、伝えるのを止めることは誰にもできません。実行あるのみです」

 

Mattさんは「ミッションベイで海洋生物基礎Ⅰ シュノーケル!」「潮プールで海の生きもの探し!」など、海がテーマの体験ホスト。サンディエゴ在住。