「この地域に外から引っ越してきた若者は、僕たちが初めてでした」静岡県藤枝市の山深い岡部町でホストをするダイスケさんは、移り住んだ当初を振り返ってそう語る。「でも、ここの人たちは、外から来た若者と外国人の私たちに、最初から本当に優しくしてくれたんです」ダイスケさんの隣で嬉しそうに話すのは、一緒にホストをする、奥さんのヒラさんだ。

「自分たちの思う美しい日本を体験してほしい」と語るダイスケさんとヒラさん

静岡出身のダイスケさんとイスラエル出身のヒラさんは、岡部町の古民家でホストをしている。自然豊かな地域で、山あいには竹林と茶畑が広がり、家の前をさらさらと流れる川は、「(プライベートビーチならぬ)プライベートリバーです。水も透き通ってきれいだし、本当に気持ちがいいですよ」パラソルや椅子を置いたこの水辺は、ダイスケさんとヒラさんのお気に入り。

ゲストが泊まる築90年以上の古民家は、広々として、骨董市などで少しずつ買い集めた家具が並んでいる。思わず懐かしさがこみ上げる、古き良き日本のイメージそのものだ。どの部屋からも四季折々の美しい景色が楽しめるのも、この家ならでは。なんだかタイムスリップしたような気分になるこの家には、自然のなかに暮らす、シンプルで贅沢な時間が流れている。

ダイスケさんとヒラさんはともに、旅行で訪れていたネパールで出会った。意気投合したのもつかの間、すでに7年間バックパッカーとして世界中を旅してきたダイスケさんは、そろそろ帰国、というタイミングだった。ヒラさんが旅を続けるなか、二人は連絡を取り続けること数ヶ月後、ヒラさんはダイスケさんのいる日本を初めて訪れ、「きれいだし、人も優しいし、大好きになっちゃった」と語る。その後、二人は結婚し、ヒラさんは日本に移り住んだ。

そんな二人がこの家に行き着いたのは7年前の2012年。世界を旅するうちに、田舎の古民家でゲストハウスを開きたいと思うようになったダイスケさんは、帰国するとさっそく、実家に近いエリアで、イメージに合う古い家を探し始める。自らハンドルをにぎり、地元の人に借りられそうな古民家がないか聞いて回るものの、代々家族に受け継がれている家が多く、なかなか思うように見つからない日々が続いた。

そんなある日、道ばたで庭仕事をしていた年配の女性に、いつものように空き家はないか聞いてみると、近くにある家をスッと指差して案内してくれたという。それがこの家だった。

「隠居の家」と呼ばれた、築90年ほどのその古民家は、当時、7年間空き家状態で、「近づくのもちょっと怖いくらい」ボロボロだった。案内してくれた女性、ヒロコさんは、その場で家を管理する息子さんに電話をかけ、「本気でここに住むのか?」と驚かれつつも、ダイスケさんは念願の古民家を手に入れた。

それから1年かけて必要最低限の改修をし、2013年にゲストハウスとしてオープン。「現代的な改装がされている古民家も多いなか、建てた当初の状態で残っていたところに惹かれた」という二人は、その後も、昔ながらの土壁や立派な柱を残しながら、冬の間に少しずつ改装を重ねている。 

家のある岡部町には竹林が多く、美味しいタケノコだけでなく、上質な竹でも有名だ。ダイスケさんは、ホストの合間に知り合いの竹林から竹を切り出す竹農家で、ほぼ独学で覚えた竹細工も作っており、事前に申し込めば手ほどきを受けられ、お土産として持ち帰ることもできる。家の周りにある広大な竹林や茶畑が見渡せる往復2時間ほどの散策コースも、ゲストに人気が高い。

リクエストに応じて出している夕飯と朝食も、評判だ。腕を振るうのはダイスケさんで、お米は自家製の有機栽培米、野菜類は近所のひとたちからもらったものも多い。「近所のおばあちゃんたちから、梅干しとか、漬物とかをよくもらうから」、海外のゲストにも「ちょっと食べてみて」と出している。自分たちだけでなく、地域の人もおもてなしに参加してもらっているのが嬉しいのだそうだ。

「海外から来るゲストには、ぜひ部屋食も体験してほしい」と、ヒラさんは夕食を部屋までサーブしに行く。料理を出しながら会話がはずみ、「食べ終わった後には、ゲストとの距離がグッっと縮まっている」という。

二人と接していると、それぞれに感じる日本の美しさをゲストと共有したいという思いが伝わってくる。世界を巡って二人がたどり着いたのは、自然に囲まれた田舎の古民家だった。そして、この美しさを一番いい形で体験してもらえるように、できる限りのおもてなしを当たり前のようにしている。

こうした情熱と細やかな気づかいこそが、二人が5年間連続でスーパーホストの認定を受けてきた所以かもしれない。「スーパーホスト」とは、その名の通り、おもてなしの達人とも言える最高のホストたちのこと。認定には、過去1年間のホスティングに関する厳しい基準をクリアしなければならず、さらに、3ヶ月ごとの審査で基準に満たない場合は、認定が取り消されてしまう。驚くほど自然体で、親しみやすい二人は謙遜するかもしれないけれど5年間連続でスーパーホストというのは、かなりすごいことなのだ。

「いわゆる娯楽施設のない田舎にある古い家」と言ってしまえばそれだけかもしれない。それでも、ここにしかないかけがえのない魅力を、この二人がしっかりと引き出しているからこそ、訪れるゲストたちが「もっと長く滞在したかった」と口をそろえるのだろう。海外から訪れるゲストはもちろん、日本人であっても、飾り気のない、圧倒的な美しさに気づかせてくれる、まさにスーパーホストだ。

 文章:太田瑞穂 / 写真:大林直行



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